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「米国のセクターはどのようなものがあるのかを知りたい方」
「どんなタイミングでどのセクターを購入したらいいのかを知りたい方」
「セクターローテーションを意識して購入機会を図りたいと考えている方」
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セクターローテーション?って何ですか。そんなに重要なんですかね
どんな時期にどんな株が上昇してくるのか?下降していくのか?はある程度、業種の特性により知ることができます。投資対象をその業種、セクターで切り替えていくことで投資成績を上げていくことができるんです。今回はそんなセクター別投資法であるセクターローテーションについてお話をします。
セクターとは? 米国全11種のセクターを紹介
基本的に『セクター=業種』と覚えておけば良いです。
さて、そのセクターですが、米国のセクターは全11種に分かれており下記のようにまとめられています。わかりやすくS&P500の構成比率の順番で並べてみました。
S&P500比率順 | 業種 | 業種 | 代表ETF | 上位企業 | TOP10比率 |
---|---|---|---|---|---|
1位 (25%) | 情報技術 | コンピュータ・周辺機器、ソフトウェア、半導体・半導体製造装置、情報技術サービス、通信機器、電子装置・機器・部品 | VGT | アップル(19%) マイクロソフト(16%) | 56% |
2位 (13%) | ヘルスケア | 医薬品、ヘルスケア機器・用品、バイオテクノロジー、ヘルスケア・プロバイダー、ヘルスケア・サービス、ライフサイエンス・ツール/サービス、ヘルスケア・テクノロジー | VHT | J&J(7% )ユナイテッドヘルス(6%) | 39% |
3位 (12%) | 一般消費財 | インターネット販売・通信販売、専門小売り、ホテル・レストラン・レジャー、繊維・アパレル・贅沢品、複合小売り、家庭用耐久財、自動車、自動車部品、卸売、レジャー用品 | VCR | Amazon(21%) Tesla(14%) | 55% |
4位 (12%) | 金融 | 銀行、資本市場、保険、各種金融サービス、消費者金融 | VFH | JPモルガン(9%)、バークシャー(7%) | 63% |
5位 (11%) | 通信 | 双方向型メディアおよびサービス、娯楽、メディア、各種電気通信サービス、無線通信サービス | VOX | Google(25%)メタ(旧Facebook)(16%) | 68% |
6位 (9%) | 資本財 | 航空宇宙・防衛、機械、コングロマリット、陸運・鉄道、航空貨物・物流サービス、電気設備、建設関連製品、専門サービス、商業サービス・用品、商社・流通業、旅客航空輸送業、建設・土木 | VIS | ハネウェル(4%弱)、ユニオン(3%) | 29% |
7位 (6%) | 生活必需品 | 家庭用品、飲料、食品、食品・生活必需品小売、タバコ、パーソナル用品 | VDC | P&G(13%)、コカ・コーラ(8%)、ウォルマート(8%) | 63% |
8位 (3%) | 素材 | 化学、容器・包装、金属・鉱業、建設資材 | VAW | Linde(12%)、シャーウィンウィリアムズ(6%) | 48% |
9位 (3%) | エネルギー | 石油・ガス・消耗燃料、エネルギー設備・サービス | VDE 参考: XLE | エクソンモービル(20%)、シェブロン(16%) | 65% |
10位 (2%) | 不動産 | REIT、不動産管理・開発 | IYR | AMERICAN TOWER REIT CORP(8%)、PROLOGIS REIT INC(7%) | 41% |
11位 (1%) | 公益 | 電力、総合公益事業、水道、ガス、独立系発電事業者・エネルギー販売業者 | VPU | ネクステラエナジー(14%)、デュークエナジー(7%) | 55% |
11種の業種セクターは時代によって大きく内容が変更になっています。例えば、通信セクター(VOX)は2018年にGoogleやMeta(旧Facebook)が入ってきたことで通信というよりもコミュニケーションセクターという色合いが強いものに変更なりました。
常に各セクターも変化するため具体的な中身を確認し続けることが重要ですね。
セクターローテーションとは?
下記の図は横軸を【金利】の低→高、縦軸を【景気】の強→弱でプロットして並べたマトリックス図です。
上記の図においては、米国株について「回復期→好況期→後退期→不況期」という流れでぐるぐると景気循環する図を表しています。
金利が低い(デフレ) | 金利が高い(インフレ) | |
景気が高い⤴ | <回復期> ・金融株(VFH) ・情報技術株(VGT) ・不動産株(IYR) | <好況期> ・一般消費財株(VCR) ・資本財株(VIS) ・素材株(VAW) |
景気が低い⤵ | <不況期> ・通信株(VOX) ・ヘルスケア株(VHT) ・生活必需品株(VDC) ・公共株(VPU) | <後退期> ・エネルギー株(VDE、XLE) |
【景気×金利】という2つの軸をマトリックスにして、その状況を把握しタイミングに合わせて投資対象とするセクターを決め投資するというのがセクターローテーションという投資の方法になります。
必ずしも同じようにならないとはいえ、景気と金利の動向を見ればこのような傾向は見て取れるため意識することが重要になるでしょう。
セクターローテーションで大切なのは『経済は金利と景気によってサイクルが起きているということ』になります。なぜ長期的な分散投資を推奨しているのかといえば、局面毎に様々な銘柄の株価は上下を繰り返すためそのバランスを取ってリスクを最小化して利益を得ることができるようにするためです。
過去のセクターローテーション順位について
このセクター別投資においては2007年~2021年まで過去の実績(パフォーマンス順位)が以下のような形でわかっています。
過去のランキングを見ると、ずっと1位に居続けているセクターはないですね。S&P500は常に平均的なパフォーマンスを出していますので最も安心では
あります。
直近ですと2020年、2021年のコロナによる影響で金利が低下しているときはINFT(情報技術)が最も高い。同じように2008年9月に起こったリーマンショックの影響で2009年も金利が低下し、INFTの情報技術が高かったことがわかります。
景気×金利別グループ分析
さて、次に景気×金利別のグループでどのセクターに投資をしていくべきかを具体的に分析していきたいと思います。
景気が高い×金利が低い:回復期
回復期においては、金利が最低水準にある状況において情報技術(VGT)の新産業にお金が集まりやすく想像で膨らむストーリーで株が買われる傾向にあります。また金利が底にある状況から上昇をしていく時期でもあるため金融株(VFH)が強くなったり、金利が安いことで住宅ローンも借りやすくなり不動産株(IYR)も強くなります。
■VGT(情報技術)
・代表的な個別銘柄:アップル(AAPL)19%、マイクロソフト(MSFT)16%
・35%がこの2銘柄(AAPL、MSFT)に集中していることからこの2つの銘柄の株価動向には要注目です。
■VFH(金融)
・代表的な個別銘柄:JPモルガン(JPM)9%、バークシャー・ハサウェイ(BRK/B)7%、バンク・オブ・アメリカ(BAC)6%
・TOP10の比率が63%と高いこともあり、TOP10銘柄の株価動向には要注目です。(具体的には下記の記事をご覧ください)
■IYR(不動産)
・代表的な個別銘柄:AMERICAN TOWER REIT CORP(8%)、PROLOGIS REIT INC(7%)
・ほぼREIT株になることもあり、個別株への注目よりも市況動向(不動産需要や人口増減等)に注目することが重要
景気が高い×金利が高い:好況期
好況期においては、景気が高いことによりモノの価値が高くなるためモノを売る商売は売上高が高くなるので一般消費財(VCR)が強くなり、その製造する素材株(VAW)も強くなる。また景気が高いことで多くの人々が移動することで資本財株(陸運、鉄道、航空、防衛)(VIS)も強くなる。
■一般消費財株(VCR)
・代表的な個別銘柄: Amazon(21%)、Tesla(14%)
・AmazonとTeslaを合わせて35%になるためこの2銘柄の影響力が大きくこの2つの株価に注目することが重要
■資本財株(VIS)
・代表的な個別銘柄: ハネウェル(4%弱)、ユニオン(3%)
・TOP10比率が29%と最も11種のセクターの中で小さい。つまり分散性が最も優れているETFであるためセクターローテーションを意識した投資と適合しやすいと考えられる。(特定の個別銘柄に左右されない)
■素材株(VAW)
・代表的な個別銘柄: Linde(12%)、シャーウィンウィリアムズ(6%)
・TOP10の比率が48%とほぼ半分を占めていることからTOP10の銘柄動向に注目することが重要
景気が低い×金利が高い:後退期
後退期においては、金利が高くなり始め、景気が冷やされていきモノの消費行動(住宅購入等)は抑制される。その一方でモノよりもコト消費等にシフトして移動するためのエネルギー株(VDE)が強くなってくる。
■エネルギー株(VDE)
・代表的な個別銘柄: エクソンモービル(20%)、シェブロン(16%)
・上位2社のエクソンとシェブロンで36%とこの2銘柄への依存度は大きい。またTOP10においても比率が65%と非常に高く、分散性より、上位企業に集中投資したETFのためこのスーパーメジャーの2社とTOP10企業への注目が重要
景気が低い×金利が低い:不況期
不況期に入ると、景気も低く金利も低いため経済活動も停滞し、モノもコトも売れなくなります。しかし生活においてインフラとなりえる必要不可欠な領域である健康のヘルスケア(VHT)、通信(コミュニケーション)(VOX)、 生活必需品株(VDC) は消費され強くなる傾向があります。公共株(VPU)に関して電力水道ガスといった生活インフラ領域になりますので株価は強くなりやすいです。
■通信株(VOX)
・代表的な個別銘柄: Google(25%)Meta(旧Facebook)(16%)
・上位2社の割合は41%と高くGoogleとMetaへの依存度は高いです。また全11セクターの中でも最もTOP10比率が68%と高くこのTOP10社までの株価動向に注目することが重要です。
■ヘルスケア株(VHT)
・代表的な個別銘柄: J&J(7%)ユナイテッドヘルス(6%)
・TOP10の比率は39%とそこまで高くなく、ヘルスケア銘柄内で広く分散されているセクターETFであるといえるので セクターローテーションを意識した投資と適合しやすいと考えられます。(特定の個別銘柄に左右されにくい)
■生活必需品株(VDC)
・代表的な個別銘柄: P&G(13%)、コカ・コーラ(8%)、ウォルマート(8%)
・上位3社で30%程度で、TOP10比率が63%とかなり偏っている印象ですね。TOP10の株価動向が大きくVDCに影響する可能性は高いと言えるかと思います。
■公共株(VPU)
・代表的な個別銘柄: ネクステラエナジー(14%)、デュークエナジー(7%)
・TOP10 の比率が55%と高いこともあり、TOP10の株価動向に影響さえる割合は比較的高いので注目することが重要です。
各セクターをこうして分析してみるとかなり色合いは違いますね。
一概に業種セクターといってもかなり特定銘柄に偏ったセクターETFがあったり、一方で分散されて業種別の全体の力で株価を上げていけるセクターETFがあったりしました。ぜひ具体的な中身を理解して頭の中にいれておくことが重要かと思います。
【厳選3選】おすすめのセクターETFはどれ?
さて、今まで各セクターの分析をしてきましたが私自身が調べた上でセクターローテーションを意識した投資をする上で実際に投資すべきセクターを3つ選んでみました。
1位: ヘルスケア株(VHT)
ヘルスケアは不況期に強いとのことでしたが、実は他の回復期、好況期、後退期においても強かったりします。
というのもヘルスケア業界は年間600兆円(2026年)に迫っており、米国GDPの20%を超える巨大産業だからです。
人間そのものに直結する産業であるためどんな局面であろうと今後も必ず成長が約束されたセクターだと言えるでしょう。
ヘルスケア業界について知りたい方は下記の記事も合わせてご覧ください。
2位:金融(VFH)
金融業界は、昔から続く最も利益率が高い業界です。お金がお金を生み出すビジネスをしているため原材料などが必要なく経済を回していく上では必ず必要な要素となっていることから人間が経済活動を行って生きていくためには必要不可欠なものです。回復期で強くなるとはいえ、どの局面においてもお金の利用価値は高いためこのセクターの強さは変わらないでしょう。
金融業界関連で決済サービス業界についてまとめた記事があるため合わせてご確認ください。
3位:資本財(VIS)
S&P500の比率の中でも10%弱と存在感をそれなりに発揮しており、またなによりTOP10の比率が29%と低いこともあり非常に分散性が広いことが特徴です。そのため資本財業界全体での力が大きく好況期のタイミングでは狙っていきやすいセクターETFではないかと考えています。この10年間のパフォーマンスを見てもS&P500の上かまたはその付近に近いこともありバランスとれた結果を出しています。
この3つを選んだ理由には下記の2つの要素を除外した点が大きいです。
・GAFAMTを含むセクターETF(VGT,VCR,VOX)
・一部の個別銘柄の影響を大きく受けるセクターETF(VDE等)
にあります。
セクターローテーションを意識した投資となれば、やはり特定銘柄の業績に影響を受けると必ずズレた結果になりやすいため、本来のセクター全体の力強さを選ぶことができるETFを選びました。
【厳選3本】おすすめのセクター分析ツールについて
ここでは、今後ご自身でセクターローテーションを意識した投資をする上で重要になるツールをご紹介します。
全セクターの年代別パフォーマンス確認
こちらは先ほど紹介しましたが、全セクターの10年以上のパフォーマンス結果をビジュアルで見ることができます。
毎日見る必要はありませんが、どんな年にどのセクターが強かったのかが一目で見ることができ長期的な視点で考えられます。
セクターローテーションの動きを確認
こちらのfinvizセクター分析ツールは現在時点でどのセクターがパフォーマンスがいいのかを確認することができ、1日、1週間、1か月、3か月、半年、1年、年初来という単位で簡単に把握できます。日々変化するので毎日閲覧しておくとよいですね。
下記はある日の例ですが、1日単位、3か月単位、1年単位とビジュアライズされた形で閲覧が可能です。
S&P500の全セクターローマップの確認
こちらは、皆様もよくご存じかもしれませんがfinvizのセクターマップです。
S&P500の個別銘柄を含んだ形でセクター別にそのパフォーマンスを動向を一目で把握できるため非常にセクターローテーション投資をする上では重要ですね。
3つのツール共にセクターのパフォーマンス状況を見るにはもってこいですね。セクターローテーションがどのような形で起こっているのかを日々見ていけば、投資を先回りして仕込んでおくことが可能になりますのでぜひ活用してください。
まとめ:セクターローテーションを意識して投資せよ
ここまでセクター別投資法について話をしてきましたので最後にまとめたいと思います。
・ セクターとは、業種やテーマ、材料など株式が持つ特性に着目して分類したグループのことです。
・ セクターローテーションとは、「景気の局面変化ごとに、有望な業種別銘柄群に投資対象を切り替えていく投資戦略のこと」をいいます。
・ 11種のセクターは、横軸を【金利】の低→高、縦軸を【景気】の強→弱でまとめたマトリックス図にプロットすることが可能で、 「回復期→好況期→後退期→不況期」という流れでぐるぐると景気循環しています。
・ セクターローテーションで大切なのは『経済は金利と景気によってサイクルが起きているということ』
・ 景気×金利別グループで 回復期、好況期、後退期、不況期毎に投資すべきセクターを検討することができる。
・ 11種のセクターも かなり特定銘柄に偏ったセクターETF と 業界全体で分散されたセクターETFがある。
・ セクターローテーションを意識した投資となれば、やはり特定銘柄の業績に影響を受けると難しいので、本来のセクター全体の力強さを選ぶことができるETFに投資したほうが良い結果を生み出しやすいと考える。
金利と景気動向から分散投資をするセクターローテーションは、
リスクを抑えることができ、負けない投資に繋がっていきます。
もし株式投資を始めるのであれば『セクターローテーション』を頭に入れた上で投資を行ってみてください。
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。